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あなたの燃える手で

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すれ違いラプソディ

17
千夜が帰ってきたのは、いつもより2時間程遅い時間だった。
別になにを疑うわけじゃないけど、何気にそう言う目で彼女を見てしまう。
「おかえり。千夜」
「ただいま」
「今日は遅かったねぇ。どうしたのぉ」
「うん、ちょっと片付け手伝ってたら、遅くなちゃった」
「そうなんだ」
それはどこか浮ついた、取って付けたような受け答え……。それに片付けで2
時間って……。
でもそれはあたしがそういう目で千夜を見ているから? それともそれが真実
だから?
答えの出ない疑心暗鬼の螺旋階段を、あたしはグルグルと登っていく。
そんな時、あたしは千夜からいい香りがするのに気がついた。
香水……。確か『月の花』という大人の女性向けの香水だ。私も買おうと思っ
たことがあるから覚えている。その時はまだ自分には早いと諦めたが、その格
調高く品のある香りだけは覚えている。
でも千夜はフレグランスというものを付けない。そんな千夜から何故。
でも確かに香る。どうして千夜から香水が香るの。まさか、まさか千夜あなた
そうなの。だれかいい人が……。
でもそんなことを問いただせるはずもなく……。


それから数日後の金曜日。あたしはカフェ『フリージア』にいた。
フリージアは大通り沿いの2階にあるカフェで、休日こそ混み合うが平日、
特に今日のように雨の日などは客も少なく落ち着ける場所だった。
そもそもあたしの本業は会社員で、千夜の曲作りはその傍らにしている。
今ここでこうしてコーヒーを飲んでいるのは、そんな会社の後輩『一ノ瀬由
梨』から、相談に乗って欲しいと頼まれたからだ。

窓際に座ったあたしは、カップを片手に何気に外を眺めていた。真下には歩
道、そして片側二車線の道路を挟んで、反対側の歩道へと目を移していく。
歩道にはいくつかの傘の花が行き来する。比較的暗い色の多い傘の中で、あた
しは水色の傘を見つけた。それは青空のような水色の傘。もう何度も見ている
千夜の傘と同じ色だ。
そして次の瞬間、その傘を差している人物に焦点があった。
「あらっ、千夜……」
でも千夜の隣には、もう一人の女性が。彼女は千夜と腕を組み、肩を寄せ合っ
て同じ傘に入っている。
「あの人って、マリィさん?」
そうだ、間違い無い。ライブハウス『魔女と伯爵』のオーナー、森下麻里絵さ
んだ。
でもなんでマリィさんと千夜が? あんな腕まで組んで……。
ライブハウスの出演者とオーナーだから、一緒にいてもわからないでもない。
でもあの密着度はちょっと高すぎやしないか。
二人はライブハウスのある方向に歩いていく。
そうだ、そういえばこのあいだのあの香水『月の花』って、マリィさんが付け
てなかったっけ……。
あたしの中で何かが一つに繋がった。

「まひる先輩」
そんな声に、あたしは窓から視線を戻した。そこには椅子にバッグを置いて、
今にも座ろうとしている百合の姿があった。
「すみません遅れちゃって……」
彼女は屈託のない笑顔をあたしに投げかけた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土・祝祭日